■社会の硬直化

 昨年の年金記録漏れ問題に始まり後期高齢者医療制度に至るまで、日本では現在、医療福祉(社会保障)制度に多くの問題が生じています。率直に言って日本の医療福祉制度は、危機に瀕していると言えるでしょう。
 この危機は、医療福祉の問題にとどまらず、不安による経済活動の委縮や社会の硬直化を通じて、日本の経済的活力を損なう大きな原因の一つとなっています。
 私は、すべての国民が安心して暮らせる社会を作るためだけでなく、活力ある日本経済を取り戻すためにも、抜本的な医療福祉制度改革を提案したいと思います。
 日本人の一人当たりのGDP(国内総生産)は1993年に世界2位を記録して以来、2000年以降は徐々に落ち続け、現在では世界18位となっています。これは日本が貧しくなったからではありません。
 バブル崩壊以降日本が成長を止めている間に、他の国々が成長し、順位を上げてきたからです。中でも注目されるのは、2000年頃まで日本より一人当たりのGDP(国内総生産)が少なかった北欧の国々が近年、急速にGDP(国内総生産)を上げ、今や世界で最も豊かな国々の一つとなっていることでしょう。
 日本の順位が下がったのは、もちろん残念なことではあります。
 しかし、それは考えようによっては、私たちが学ぶべき国が17ヶ国もあり、これらの国の良いところをしっかり学んで努力すれば、日本はまだまだ成長することができることを意味します。

■北欧の成功例

 では、北欧に学べることは何でしょう。何より私は、「十分な社会保障制度を整備して安心な社会を作ったうえで適正な競争を行うことが、国に活力をもたらす」ことだと思います。
 現在の日本は、話題の後期高齢者医療制度をはじめとして、年金・医療・介護と社会保障上の問題が山積しています。
 これらの問題に対して日本は、これまで正直に言って、「社会保障費が増えすぎると国の成長が損なわれるから、何とかして抑える」というアプローチをとってきました。
 そして足りない分は、会社や役所が終身雇用や身分保障を提供することで、人々の生活を守る役割を果たしてきました。それは一方で公務員と民間人の待遇格差、正規雇用者と非正規雇用者の格差を生んできました。
 しかし、北欧の国々は、これとは違うモデルを示しています。これらの国々では一般的な予想に反して、労働者の解雇が容易です。優良企業の正社員となったから、公務員となったからといって、業績が悪化したり、その部署が不要となったりすれば解雇されます。
 しかし、その分社会保障が整備されており、生活に困ることはありません。再就職支援、再教育の制度が整っており、本人が希望すれば、ほぼ無料生活費まで支給されて、あらためて大学教育を受けることさえ可能です。
 失業したり、病気になったり、年をとったりしても安心して暮らせる、希望する教育はきちんと受けられる、そういった充実した社会保障制度を整えた方が、人々は安心して競争に参加できます。
 その方が、社会の格差は縮まって、必要な時に必要な勉強をして、必要な分野・必要な産業に必要な人員が配置されることで国家の競争力が高まり全体として成長することができるという成功例をこれらの国は示しています。
 もちろん日本は北欧ではありません。日本には日本の文化と社会がありますが、先人たちがやってきたように、日本の長所は残したまま、他国の良いところを素直に学ぶことは十分可能だと思います。

■未来の日本へ

 今こそ、抜本的な医療福祉制度(社会保障制度)改革を行って、子供も大人も高齢者も、地域でも都会でも、安心して医療を受けられ、安心して老後を送れ、希望する教育はきちんと受けられる、そんな社会保障制度を作ることを提案したいと思います。
 そうして、全ての人が安心して自らの持てる能力を十分に発揮することにより、未来の日本を輝けるものにすることができると信じています。