安倍ノミクス

 現在安倍ノミクスによって「円安」と「株高」が実現していますが。これらは、日銀がお金を刷りまくって市場に放出しているため、需要供給曲線に従って円の価値が落ちている結果ですので、コロンブスの卵的で恐縮ですが、当然と言えば当然です。

 多少将来への希望がさしてきたこの状況は、私も一国民として気分は悪くありませんが、一方でインフレターゲティングの当然の帰結として、この7月に入って生活用品の値上がりが目白押しです。また、株価も乱高下しています。

 にもかかわらず安倍ノミクスが支持されているのはなぜか、それは、前述のとおり「これから景気が良くなる」と言う「将来への希望」があるからです。では、この「将来への希望」はどうすれば実現するでしょうか?

 安倍ノミクスによって景気がよくなり、一般の方々が豊かさを実感できるようになるためには、「インフレ到来」からさらに、次の2段階が必要です。

(1) 2%のインフレ達成

(2) 企業はお金を持っていると損になるので、投資をする。これによって企業が儲かる。

(3) 儲かった企業が社員の給与を上げる。

では、(2)と(3)はどうすれば実現できるでしょうか。

それには、A企業の投資機会を拡充すること B企業が社員の給与を上げる仕組みを作ることが必要になります。

規制緩和

まずAですが、これを実現するためには、安倍総理が高々と謳い上げた「女性の力の活用」や「(iPS細胞等の)研究開発の促進」、更には「国家主導のトップセールス」等々、やるべきことは非常にたくさんあります。しかし、全2者は、その効果が出るまでに長期間を要する上に効果も不確定で、経済対策としては「スピード」の面で疑問が残ります。「国家主導のトップセールス」は即効的で派手で、「スピード」に問題はありませんが、その対象となる産業は限られ、「量」の面で十分でありません。

 ある程度の量の投資を、ある程度速やかに実現するためには、「今まで規制によってできなかった投資を、規制緩和によって可能にする。」ことが、最も現実的であると、私は思います。 株式会社の病院経営、混合診療の容認、株式会社の農地保有の容認、株式会社の学校経営の容認等は、今まさに巨大マーケットが存在するにもかかわらず規制によって投資が行われていない分野であり、是非、大胆な規制緩和を進めるべきものと私は考えます。

 この様なことを言うと、すぐに「利益一辺倒」「競争至上主義の弱肉強食」で、「貧しい人が医療受けられなくなる。」「農業が崩壊する。」等々の意見を言われる方がおられます。

 しかしたとえば、それこそ「利益一辺倒」「競争至上主義」の外食産業、医療産業で、貧しい人は食事をできなくなったでしょうか?服を買えなくなったでしょうか?答えは全く反対で、今や280円で相当程度においしい牛丼を食べられ、2980円でどこに着ていっても恥ずかしくないボタンダウンのシャツと地のクロスパンツのセットが買えるようになりました。医療も農業も教育も、「利益一辺倒」の「競争」によって、むしろサービスの質は向上し、値段は低下する可能性の方がはるかに高いと、私は思います。

 ただし、そのためには、単なる「自由競争」ではなく、「適正で実効性のある監督に基づいた」「コントロールされた競争」が実現される必要があります。

 小泉総理の構造改革路線-規制緩和路線は、たしか「ライブドア」に代表される、ある種の「不良業者」を生み出しました。これを多くの人は、「規制緩和の負の側面」と評価しています。
 しかし、本当に悪かったのは、規制緩和そのものではなく、「ライブドア」のような不良なプレーヤーの問題点を速やかに把握して、どのような行動がどのようなルールに反するのかを明示してその是正を求める「審判」がいなかったことであると、私は思います。スポーツは純粋な「競争」ですが、「明確なルール」と、その実行を担保する「強力な審判」がいて初めて、ライバルがお互いを高めあう高度でエキサイティングなプレーが実現します。
 経済も全く同じで、「規制緩和」による競争は、同時に、「経済ルールの明確化」と、「ルール順守させる制度の確立」が伴わなければなりません。小泉改革は、この両者がかけていたから失敗したのだと、私は考えます。
以上をまとめると、私は、安倍ノミクスが実際の企業の投資拡大、収益拡大につながるには、次の3点が必須であると考えます。

【1】株式会社の病院経営、混合診療の容認、株式会社の農地保有の容認、株式会社の学校経営の容認等の大胆な規制緩和。

【2】上記の緩和において、守られるべきルール、行政運用の明確化(行政の透明性の確立)。

【3】ルールを事後的に監督し、これを実行させるための行政機構の拡充(行政の実効性の確立)。

 繰り返しになりますが、現在一世を風靡している安倍ノミクスは、第三の矢として【1】を掲げていますが、この部分で既に完全に腰砕けになっており、【2】【3】は言及もされていません。是非、「単なる資産インフレ」にとどまらず真の景気回復を実行する為に、【1】のみならず、【2】【3】を実行して、「効率的で、公正で、公平な市場における適正な競争」を実現したいと思います。

働く皆さんの給与が上がるために

次にBの、「働く皆さんの給与を如何にあげるか」というお話です。安倍総理自身が認めているように、最終的に給与が上昇しなければ、安倍ノミクスは単なる「インフレ」で終わり、景気の向上に寄与しません。「働く皆さんの給与の向上」は極めて重要な政策課題です。

ではこれを、安倍総理がそうしているように、「経団連の社長に給与を挙げてもらうように『お願い』」すれば、実現するでしょうか?これは正直現実的ではありませんし、そもそも「お願い」は政策ではありません。政策は、「ある程度の強制力を持って実現される」ものでなければ、意味がありません。 私はこれを「働く皆さんの権利を実現する行政」、具体的には、「残業代を100%支払う。」「有給を自由にとってもらう。」等々を強力に指導し、違反した企業には厳格なペナルティを課すことで、実現するべきだと思います。これをするだけで、手取りが10%、20%上がる方がほとんどでしょうし、それどころか倍になるという人まで稀でないでしょう。

そもそも現下の法律でも、本来残業代は100%支払わなければならず、有給は原則として自由にとってもらわなければなりません。にもかかわらずこれが実現せず、名指しで恐縮ですが、自民党候補のワタミさんのような企業がむしろ「勝ち組」となってしまっているのは、現在の労働行政の運用が極めて使用者サイドに偏っているために、企業にとっては、所謂「ブラック経営」が「やったもの勝ち」の戦略になってしまっているからです。 行政-政府が、働く方の権利を実現する厳格な運用を行うことで、「ブラック経営」を「コストとリスクが高い戦略」とすることで、これを一掃することは十分可能だし、働く皆さんの給与を挙げて景気を回復する為に絶対に必要なことだと、私は思います。

「残業代を100%払ったら日本多くの企業がつぶれる。」「現場をわかっていない。」と考える方もおられると思いますが、それは上述の通り、「皆がやっているやったもの勝ちの戦略」だから一人だけ止めるのが困難だからであり、「いっせいのせ」で「誰もルール違反が出来ない。」状態にし、更に行政も、移行期、そして小規模企業に十分な支援をすれば、企業は、それこそ民間の知恵を絞って、残業代を払えるところは払い、払えないところは残業なしで仕事が回る仕組みを作るでしょう。「ブラック経営」「長時間労働」という日本の大問題を解決できるかどうかは、結局は政府の覚悟の問題だと、私は思います。

規制緩和によって「頑張った企業が報われる。」経済体制を作ると同時に、働く方の権利が実現される厳格な行政運営によって「頑張った人が報われる。」「頑張った人が生活を楽しめる。」社会を作ってこそ、真の景気回復が実現できると、私は思います。